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2012年1月

No.6

近未来、人類は世界の六ヶ所を拠点にして生存していた。それらの都市の中でも最も最先端科学の粋を集めたのが”聖都市”と呼ばれる”No.6”である。2013年、エリートとして将来を約束されていた12歳の少年・紫苑は、台風の日に、ネズミという名の個性の強い少年逃亡犯をかくまってしまう。そしてその日から紫苑の運命は急変することになるのだった。

ストーリーテラー、あさのあつこの近未来冒険SF小説です。SF的な道具立てやストーリーはスタンダードなもので、特筆すべきものは何もないのですが、人間というものをしっかり描いているのがこの作家の本領。しかしさすがにジュニア向けなので、深い心理描写も一般成人用の小説では特段珍しくないため普通に読めてしまいましたが、一方でどこか新鮮だったりもして、もっと若い頃に読んでいればインパクトも数倍違っていたように思われます。そういう意味ではせめて高校生くらいまでには読んでおいてほしい一冊。全9巻で完結しました(そうそう、これも昨年から時間を取られた原因のひとつとなった長い物語でした)。テレビアニメにもなりましたが、そちらは時間がなかったのか、いろいろ細かい部分の説明をしないまま終了、という印象でした。

オススメ度:☆☆☆

12

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キングを探せ

赤の他人である4人が企てた四重交換殺人。お互いを奇妙な名で呼び合う男たちの犯罪計画を、小説家にして名探偵の法月綸太郎は見破ることができるのか?

遅筆のおかげで私の読書ペースにぴったり(?)のこの作家。作者と同一氏名、ついでに職業まで同じのこのシリーズ、久しぶりだったのでかなり期待して読み始めました。最近の流行と言うべきか、ゲームっぽい雰囲気のストーリーになっていて、読みやすい反面、登場人物たちの息遣いみたいなものがあまり感じられない話ではあります。肝心のミステリーとしては、いろいろ展開にひねりを入れてあるのは苦心が見えて読者としては嬉しい。当初四重交換殺人が完遂したあと、計画そのものの綻びを論理的に突いていくといった正統派の展開を勝手に想像していたら、犯人たちに起こったアクシデントのためにストーリーも意外な方向へ。こういった予想外は大好きなのでこれも嬉しい。いったいどんな決着を見るのかと思って進んでいくと、最後にはちゃあんと犯人と探偵の知恵比べもあり、全体的にインパクトこそ弱いものの、ベテラン作家らしくきれいにまとまってもいて、なかなか面白く読める良作ではありました。
ところでここでも出てきましたね、「自律神経失調症」。もはや市民権も得て、本作でも正式な病名のような扱いになっていますが…まあ学術書のような説明をしろなどと野暮を言うつもりはないんですけど、なまじ私も心療内科に通ったことがあったりしたこともあって、そのあたりの細かいことがどうにも気になってしまうので…ここで「僕の悪い癖」と続けたら『相棒』の杉下右京になっちゃいますが(笑)。
さあ、久しぶりと言えば、次は綾辻行人の「館」シリーズ最新作、『奇面館の殺人』ですね。早く読みたあ~い(次は妖怪人間かい)!

オススメ度:☆☆☆

11

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”文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)

本を食べちゃうくらい物語を愛する”文学少女”こと天野遠子。ある日、彼女が通う学園の文芸部用投書箱におかしな紙片が投げ込まれていた。その犯人である雨宮蛍を見つけたものの、蛍は自分を幽霊だと言うのだ。遠子は、後輩で彼女の「おやつ係」である井上心葉とともにその謎を解こうと奔走する。

”文学少女”シリーズ第二作目。間がずいぶん空いてしまいました。ああそうだ、これも本をネタにした小説でしたね。今回のお題はエミリー・ブロンテの『嵐ヶ丘』。話は少しそれますが、この名作をきちんと読んだことはないのですけど、あらすじは『ガラスの仮面』で知ってたりします(笑)…第一作『”文学少女”と死にたがりの道化』の時は、そのネタも気になる上に、毛色の変わったミステリーといった風情で興味をそそられましたし、なかなか面白く読ませていただきました。なにせそれまでライトノベルといえばファンタジー色の強い作品が多いように感じていたので(笑)…さてその続編たる本書ですが、うう~ん、登場当初のインパクトが薄れたところへもってきて、ストーリー的にもややパワーダウンの印象が…。読みやすい青春ミステリーではあるんでしょうけど、見せ場が無い。多感な年代の人たちには切ない話として充分堪能できるかも知れませんが、私のような感受性が擦り切れたおじさんには(苦笑)…もっと強い酒持ってこおおおい!(爆)…例えです、例え。お酒はやりませんので…え?ヤクなら?ああ良いかも(…って、おいおい)
ああやっと二作目読了か。このシリーズもまだまだ追いつくには先が長いなあ、なんて嘆息していたら、まごまごしているうちにシリーズ終了しちゃったんですね。

オススメ度:☆☆☆

10

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ある少女にまつわる殺人の告白

十年前、長峰亜紀という名の少女をめぐって起きた忌まわしい事件。児童相談所の所長や医師、担任の教師や幼馴染みたちの証言によって次第に明かされてゆく事件の真相とは?

「このミステリーがすごい!大賞」の優秀作受賞ということなので、この作家のデビュー作でしょう。インタビュー形式のミステリーですから大体の展開は読めていましたが、ちょっとくどいかな。もう少し全体を短くしても良かったように思います。なにせ内容が重いので長丁場は読者がしんどいかもって感じでしょうか。児童虐待というテーマを扱っており、本格ミステリーのテイストもいくらかあるものの、むしろそのテーマから社会派ミステリーと言った方がいいかも知れません。いやこれはもう、いっそ現代ホラーというべきかな。
しかし児童虐待の現状って、ある程度想像はしていたけど、それ以上に酷いものがありますね。中でも何が一番凄かったって、私なんか何にも知らないもので(まあ、大半の人は知らないでしょうけど)、児童相談所に勤めている人のみんながみんな、児童福祉の仕事の専門または希望していた人ばかりではないという事実。それどころかその少し前まで市役所で税金の出納係なんかをやっていた、まったくの門外漢がよく分からないままやらされることも珍しくはないらしい。つまり人材不足。その一方で虐待などの件数は増えるばかりなのでとてもじゃないが対応しきれるものではないのだそうです。公務員は気楽な職業だなんて言ってられませんね。このあたり、救急医療現場に比肩する悲惨な現状です。それを一般の読者に伝えるだけでもこの本の価値はあると思いましたが、内容が重過ぎて、純粋に楽しめるだけの小説とは言えそうにありません。ただしいろいろとインパクトはありますし、作者の文章力もたしか(とは言え冒頭あたり、話し言葉にしてはややレトリックが過ぎる感じが違和感ありありで鼻につきましたが)なので、たまにはこういった作品に目を通すのも悪くないんじゃないでしょうか。

オススメ度:☆☆☆

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ビブリア古書堂の事件手帖

あけましておめでとうございます。いよいよ人類最後の年がやってまいりました(何のことやら分からない人のために、一応書いておきますと、現代科学をも凌ぐ文明を持っていたという説すらあるマヤ文明の暦では、西暦2012年以降が記されていないのだそうです。よって人類は2012年で滅亡するという話になり、このネタは映画にもなりました)!
まあ、滅亡云々はさておき(おいおい)、今年も、一冊でも多く本が読めて、いい本を少しでも紹介できたらいいなと思います。では新年一冊目はこの本から!

子どもの頃の体験から読書に対するトラウマができてしまった五浦大輔は、亡き祖母が残した漱石全集の鑑定を「ビブリア古書堂」という古本屋に依頼することになり、店の主であり、若く美人の篠川栞子と出会う。彼女はその鑑定で、全集に隠された秘密があることを感づくのだが…

図書館戦争』や『ダンタリアンの書架』の時もそうでしたが、やはり本をネタにした物語っていうのはそれだけでワクワクしますよね。反則だよなあ(と言いつつ口元は綻んでいる)…初めて読む作家さんですが、ライトノベルで活躍している人みたいですね。古本屋を舞台に、古書にまつわる人たちの、ちょっと謎めいた物語。ミステリーシーンで最近大流行(?)の”日常の謎”ってやつを扱った短編連作集です。なのでミステリー度はやや低いですが、その分古書ネタが面白く読めます。例えば、もう廃刊になったサンリオSF文庫なるものが本書中で何度か登場しますが、興味をそそられてネットで少し探してみたら、へえ、作中で書かれていたように、プレミアが付いて古本なのに元の価格よりたしかに高く売られてました。こういう知識がないとこういった話は書けないですよねえ。すごいなあ。
古書店の屋号はビブリオマニア(蒐書狂)あたりと関係がある言葉から来てるんでしょうか。本書の探偵役である店主の栞子さんは、はっきりくっきり私好みです(笑)「このライトノベルがすごい!」の人気キャラクター投票でも人気出そうなキャラだと勝手に入れ込んでますが、どうなるかな。作品自体も好評だったらしく、すでに第2巻が刊行されています。いずれアニメかドラマになりそうですね。

オススメ度:☆☆☆

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