黒百合
1952年夏。六甲で出会った3人の少年少女たちのきらびやかな日々と淡い恋心。そして彼らの周りの大人たちに起きていた過去の出来事。それぞれの物語は次第に収斂してゆき、やがて明らかになった事実とは…
”文学とミステリーの融合”という謳い文句を冠しているこの作品は、「このミステリーがすごい!2009」や同じく今年度の「週刊文春傑作ミステリー」でベストテン入りを果たしました。少年たちの青春を描いた部分はたしかに叙情的で、3人の心の機微の丁寧な表現には、自然に引き込まれるものがあります。かといって文体もやたら装飾されているのではなく、シンプルで大変読みやすい。この作者、初めて読んだのですが、今までいろいろなジャンルを書き分けてきているとのことですし、かなりの芸達者(?)なんだろうとお見受けしました。
ただ問題はミステリー部分の方ですね。”仕掛け”は、読み進める途中でいくつか予想した中のひとつでしたので、あまり驚きがなかったですし、青春ストーリーに枚数を割きすぎてか、犯人側の描写が弱すぎるような気がしました。あるいは作者としては結末の効果を際立たせるために敢えてそうしたのかも知れませんが、何か中途半端な感じが拭えません。それならいっそ犯罪部分は隠し味程度にしておき、青春ストーリーのみで勝負しても充分だったようにも思えました。まあ、これでこの作者の過去の作品にも興味が湧いてきましたけど。
オススメ度:☆☆☆
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黒百合 著者:多島 斗志之 |
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