神様ゲーム

小学四年生の芳雄は友だちと探偵団を結成し、猫殺しの犯人を捜索していたが、ある日、”秘密基地”にしていた廃屋で親友・英樹の死体を密室状態で発見してしまう。自らを神様と称していろいろなことを芳雄に教える同級生の鈴木くん。彼は本当に神様なのか?そして英樹を殺した犯人は?

やや子ども向けのミステリーで、その分読みやすい文章で書かれていますが内容は子ども向けにしてはけっこうハードかも知れません。不倫だの少女に対するエッチだの、おいおい良いのかい?って箇所も散見。まあ最近は子どもにだって簡単に情報が手に入る時代なのでこのぐらいは大したことではないのかも知れませんが…事件に関してもエグいかなって感じもあって、子ども向けならそれこそ最近流行の”日常系の謎”ってやつで良かったんじゃないかなあ、とか思っちゃいました。まあそれはさておき、ストーリー展開自体はスタンダードで、ジュニア仕立てにしつつも大人の読者でも飽きさせないだけの力量はさすがです。途中でなんとなく犯人が分かってしまい、その後のどんでん返しも一応予想の範囲内でしたが、一筋縄ではいかないのがこの作者。最後の仕掛けはさらに意外で、さすがにここまでは考えていなかった…というか、いいのかな、こんな終り方で。もはや得意技と言うか、作風なのでしょうか、なかなか読後感が微妙に居心地悪くしてあって、やっぱり子ども向けではないような気がした一方で、この作家らしいですけど…本格とまではいかないにしろ、その味わいやら不思議要素やら、いろいろ織り込まれたミステリーです。
2006年版「このミステリーがすごい!」第5位。

オススメ度:☆☆☆

29

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第12回 本格ミステリ大賞

第12回の本格ミステリ大賞が、さる5月13日に発表され、小説部門では5編の候補作の中から、城平京の『虚構推理 鋼人七瀬』と皆川博子の『開かせていただき光栄です』の二作が受賞となりました。

『開かせて~』は昨年末の各ミステリーランキング入りで、もう、お馴染みのタイトルになってしまった感がありますね。作者は超のつく大ベテランですし、自分でも一作くらいは読んでいるはずだと思い込んでいたのですが、どうやらまだ読んだことのない作家さんの一人のようです。この作品をしょっぱなにしようかな…それにしても80歳を過ぎて、なお執筆を続けるだけでも難しいと思うのに、さらに傑作を書けるというのは単に凄いなんてものではなく、もう言葉が見当たりませんね。ただただ感服です。『虚構~』も「2012 本格ミステリ・ベスト10」の第4位で見た作品名。こちらも未読の作家さんなので、早く読まないと(何度目だ、このフレーズ)…

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ユリゴコロ

大型ペットショップの若き店長・柳原亮介は、ある日実家の押入れからノートを見つけた。そこに書かれた内容は、書き手が殺人を犯したと告白している異様なもので、フィクションともとれるが、亮介は、すでに亡くなっている母親か、病で余命いくばくもないと宣告された父親どちらかの手記ではないかとの疑いを拭いきれない。やがて亮介に明かされる真相とは…

まだ未読ですがこの作者のデヴュー作がホラーだということは知っていて、してみると本作の醸し出す怪しげな重い雰囲気はそれに通じるものがありました。得体の知れない気味の悪さがじわじわまとわりつく感じ。決して嫌いではありません。むしろ嬉しいくらい。あ、もちろん読書の話ですよ(笑)
文章も読みやすく、物語に引き込まれるというよりは、絡めとられるとでもいった奇妙な感覚を味わいながら、物語は終盤へ。ラストは何となく予想できた範囲でしたし、この主人公に起きた悲劇の原因がすべて一本の線で繋がっていればミステリーとしては良い出来だと思ったのですが、これじゃあ、やっぱりホラーっぽくね?って感じで、ここは、この作者さん、絶対ホラー向きだと決めつけちゃうのです。
このミステリーがすごい!2012年版」第5位、「2011年 週刊文春傑作ミステリー・ベスト10」第6位、「2012年 本屋大賞」第6位、「ミステリが読みたい!2012年版」第9位。

オススメ度:☆☆☆

28

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万能鑑定士Qの事件簿

雑誌記者の小笠原悠斗は、街中のあちこちに貼られている”力士シール”の謎を取材していくうち、凛田莉子という、若くて美人の鑑定士に出会い、その類まれなる観察眼に驚嘆する。そして彼女はその能力で奇妙な一味が企てた犯罪を未然に防いだ…はずだった。しかし、それは日本国中を揺るがす大犯罪の前触れに過ぎなかったのだ。果たして莉子は、この国の未曾有の危機を救うことができるのか?

『千里眼』シリーズも完結ではないにせよいったん休止なのでしょうか、松岡圭祐の新たなこのシリーズが始まり、最近では姉妹編でキャビンアテンダントが主人公のシリーズもあったりするようです。飛び抜けた、物事を見破る力を持つヒロインという点では『千里眼』シリーズの岬美由紀と同様ですが、あちらは身体能力も抜群のスーパーウーマンで、その出自も、幼少期は頭の切れる子ども、長じてからは自衛隊初の女性戦闘機パイロットで、唯一の欠点(?)は、男女の機微にうといくらいという、ありえないほど完璧な主人公でしたが、本作の凛田莉子はその辺からの変化を狙ったようで、特別な身体能力は何もなくて普通の女性、元々は天然キャラで頭をつかうことは苦手だったが一念発起して努力でその能力を開花させたという経歴の持ち主になっています。キャラクター的には多少庶民受けは良いのかも知れませんが、物語を読んでいる最中はあまりその差は感じませんでしたね。トリビアをネタにしたストーリー展開の面白さで読ませる作者の手法は同じですし。マンネリ化が怖いものの、ヘタに手を加えず、これでいいんじゃないでしょうか。そう言えば『千里眼』シリーズも『マジシャン』シリーズとコラボがあったので、そのうち「千里眼vs.万能鑑定士」なんてやるかも知れませんね。

オススメ度:☆☆☆

27

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相棒

警視庁の窓際部署・”特命係”に配属されている杉下右京と、彼とコンビを組む「相棒」の二人が事件を解決する人気刑事テレビドラマで劇場版も二本制作されています。すでに10年以上も続いているのでここで記事にするのも何を今さらの感がしないでもないですが、本格的に観始めたのが最近になってからなんですよ、私。人気のあるドラマだとは聞いていましたが、刑事ドラマもあまり観なくなっていたので、う~んどうしようかなあ、とか悩んでいるうちに月日は流れ(笑)…ちょうど初代相棒の寺脇康文から二代目の及川光博にバトンタッチしたのを機に観始め、今回もシーズン11から三代目を成宮寛貴が演じると先日発表があったのでタイミングも良く思え、記事も書いておこうとした次第で。
観始めてから分かったことですが、どうやら刑事ドラマとはいっても従来のものと違っているのは、事件の背景にある社会問題を扱ったり、犯人や被害者など関係者の人間模様を描く作風より、わりとミステリーっぽい雰囲気を漂わせた、水谷豊が演じる、ただ者ではない天才刑事・杉下の推理をメインにすえた作品が多いというあたりかと。アクション中心でもなければ古い刑事ものにありがちな汗臭さもあまりなく、スタイリッシュと言うんでしょうかね…ひねりの効いた面白いストーリーも多く、なので私的にはもっと早く観ておけばよかったなって後悔も多少あったり。なにせ過去のシーズンを地上波の再放送や”ようつべ”で観るものの、その分量といったら…シーズン8からはリアルタイムで観ているので、遡って観る分は1から7のシーズン。今ようやくシーズン1~3までを全話と、シーズン7のほとんどを観終わりました。ふう、でも4から6はまだ手つかずで、いつになったら終わるのやら(苦笑)。今まで観終えた中では、シーズン2の「殺人晩餐会」と、7の「越境捜査」のエピソードが特に秀逸でした。
さあ新相棒を迎えてのシーズン11、楽しみですねえ。
テレビ公式サイトは → こちら

オススメ度:☆☆☆

26

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ミレニアム1:ドラゴン・タトゥーの女

ジャーナリストのミカエルは、巨大実業グループの代表から、行方不明になった一族の少女・ハリエットに何が起きたのかを探るように依頼をされる。ミカエルは風変わりな調査員・リスベットとともに調査を開始した。

作者はスウェーデン人のスティーグ・ラーソン。本作を一作目とする「ミレニアム」三部作は母国はもとより全世界でベストセラーになるものの、作者は急逝。残念ながらデビュー作が遺作となってしまったのです。
さてその内容ですが、ややミステリー色も織り混ぜたサスペンスストーリーです。エンターテインメントの要素をいくつか盛り込んではあって、それなりに楽しめるのですが、取り立てて斬新なアイデアが使われているわけでもなく、全世界で大ヒットしたほどの理由が私にはイマイチ分からないのが正直な感想なのですが、ストーリー展開がすっきりしていて、すいすい読み進めていけることと、やっぱりリスベットの特異なキャラクターを筆頭に、登場人物が良く描けていたのが要因なのでしょうか。翻訳ものにありがちな、誰が誰だか分からないなんてことはなかったです。まあ、まだ第2、第3作とシリーズは続いていくので、そこまで読まないと本当の面白さが分からないのかも知れませんけど。
またもベストセラーの宿命で、映画化されました。

オススメ度:☆☆☆

25

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哄う合戦屋

天文18年(1949年)、中信濃・横山郷の領主・遠藤吉弘の城に流れ着いた天才軍師・石堂一徹。彼は吉弘に仕えることになり、その働きで遠藤家は急速に勢力を拡げ始めた。しかし一徹は吉弘の想像をはるかに超えた野望を抱いていたのだ。

作品も作者もまったくノーマークで、知り合いから教えてもらったこの小説。戦国時代を背景に、ある天才軍師の生き様を描いたエンターテインメント作品。読みやすい文章、魅力的な人物造形など、作者は違いますが『のぼうの城』に通じるものがあり、一気に読めてしまう面白さでした。しかもかの作品がいくらか史実に縛られてしまうために、物語の終盤がある程度推測できてしまうのに対し、本作はまったく予想できないままラストへ。最後の最後まで目が離せないという楽しみが味わえたのは大きく、私としてはこちらの方が評価はさらに上。本作もいずれ映画にでもなりそうな予感。
主人公の16年前を描いた第二弾・『奔る合戦屋』も刊行されています。

オススメ度:☆☆☆☆

24

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パラドックス13

この世界で「P-13現象」と呼ばれる謎の現象が起きることが科学者たちの計算で判明した。特定の時刻に時間の一部が消失してしまうというのだ。しかし具体的には何が起きるのか分かっていない。国の首脳陣は報道管制を敷きつつ、考えられるだけの対策を講じてその時を待った。そしてついにその時刻。刑事の久我冬樹は犯人逮捕のため職務遂行中だったが、凶弾に倒れたと思った次の瞬間、周りから人々が消えてしまっていた。

もうあまり、かつてのような期待が出来なくなってきている東野圭吾。本作はミステリーではなく、SFパニック小説とでもいったところで、なおさら期待は薄めで読み始めました。しかしよく考えてみれば、この作者って、名作『秘密』にしろ、『時生(トキオ)』や『パラレルワールド・ラブストーリー』にしても、SF的な設定での作品でした。なので、わりとありきたりな展開ではあるものの、それほどひどい内容にはなっていないのは意外と得意とする作り方だからかも知れません。しかも、途中ではなかなか考えさせられる人間ドラマもありましたし。これが出てくると強い。なにせこの人の真骨頂ですから。これのおかげで”読める”だけの体裁が整った感じです。ただし、ラストはどうにもよく分からないと言うか、すっきりしない終わり方。私は、いくら面白い物語でも終わり方がうまくないと評価が急降下になる人なので、トータルでは、やや低めの評価とならざるをえませんでした…でもまあ星2つは厳しすぎるかな、ということで2つに近い3つ。

オススメ度:☆☆☆

23

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2012年 本屋大賞

2012年の本屋大賞の発表がありました。ベスト10は以下のとおり。

大賞   舟を編む                (三浦しをん)
2位   ジェノサイド              (高野和明)
3位   ピエタ                  (大島真寿美)
4位   くちびるに歌を            (中田永一)
5位   人質の朗読会             (小川洋子)
6位   ユリゴコロ               (沼田まほかる)
7位   誰かが足りない             (宮下奈都)
8位   ビブリア古書堂の事件手帖  (三上延)
9位   偉大なる、しゅららぼん        (万城目学)
10位  プリズム                (百田尚樹)

大賞は出版編集者を題材にした物語のようですね。この作者の小説はまだ『白蛇島』くらいしか読めていないのですが、定評のある作家さんなので、この作品をはじめ、代表作のいくつかは読破していきたいところだと思っています。2位は、やはりここでも登場のSFエンターテインメント。3位も18世紀のベネチアを舞台に、音楽家のビバルディなんかも登場する小説のようで、なんだか面白そうだと気にしていたところです。4位と5位、そして7位は今のところ時間があれば読むかもしれません程度の食いつき。5位の作家さんは『博士の愛した数式』を書いた人ですね。6位は昨年のミステリーランキングでランクインしていた作品なので、これは必読でしょう。8位は古書を題材にした日常ミステリー。なかなか面白かったです。9位も『鹿男あをによし』や『プリンセス・トヨトミ』で楽しませてくれた作家さんなのでチェックはしていますけど、さあどうしよう。10位は『永遠の0』が良かったので読みたい作家さんなんですけど、今回は恋愛小説とのこと。『ボックス!』あたりの方が巷の評価は良いみたいですし…まあ、まずはやはり大賞受賞作から読まないとですね。

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消失グラデーション

高校バスケットボール部員の椎名康は、女子部のエース・網川緑が校舎屋上から落下した現場に居合わせてしまう。しかしその場で康は何者かに襲われ意識を失い、なぜか網川の姿は消えていた。康はクラスメイトの樋口真由とともに解明に挑む。

横溝正史ミステリ大賞受賞作で作者のデヴュー作なのですが、のっけから感じたのは文章がイマイチ。懸命に独自のレトリックを駆使しようとしているのかもしれないのですが、情景描写などはあまり洗練されていない分、かえって物語に入っていきにくい。まあ読みづらいとまでは言いませんが…もっと平易な文章でいいんじゃないかと思いました。学園青春ミステリーだと思うのですが、メインキャラクターに屈折した人が多く、悩み多き年頃という雰囲気の作風になっているので、爽やかさを期待できないのはまだいいとしても、なぜか登場する、物語のキーになる人物ですが、彼の登場自体が御都合主義に思えなくもないのが残念。しかもミステリー部分は、古典とも言える消失ネタもありきたりなトリックだし、もうひとつの”仕込み”も私は当初から疑っていたので意外ではなかったです。ただし、簡単に読者に見破られないような工夫は一応されているのですが、ここまでやるとフェアじゃなくなるのではないでしょうか。こう書いていくとどうにもひどい作品に感じるかも知れませんが、まあまあ普通に読める作品ではあるんですけど。ただ、全体に”売り”がないので評価できるところがない…とは言っても「2012 本格ミステリ・ベスト10」と「このミステリーがすごい!2012年版」の第6位。やっぱり最近のランキングは参考程度にしかならないのでしょうか。おそらく”仕掛け”の部分をどう捉えるかで評価が分かれるんでしょうね。

オススメ度:☆☆☆

22

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海の底

横須賀に巨大化した甲殻類が上陸し、人々を襲い始めた。自衛隊の”やんちゃ”若手自衛官の夏木と冬原は子どもたちとともにかろうじて潜水艦に避難する。街中では警察が必死に防戦に努めるものの、重火器を持たない彼らでは防ぎきれない。軍隊として認められていない自衛隊の戦闘行為はあるのか?

有川浩の自衛隊三部作、『塩の街』、『空の中』に続いてようやく読了。『塩の街』が近未来SFの背景に少女マンガ風のラブロマンスを絡めたストーリー、そして『空の中』が異性物とのコンタクトから始まって人間同士のコミュニケーションをテーマにした作品だったのに対して、本作は冒頭からいかにも怪獣ものっぽいスタート。しかし大半は戦闘そのものより人間ドラマが描かれます。遅々として進まない自衛隊出動と、一方で奮闘する警察。それら治安側全体の様子を縦糸に、そして潜水艦に避難したものの、外に出られない状況での二人の自衛官と子どもたちとの閉鎖空間での葛藤を横糸にストーリーは進んでいき、やがてラストでは、後の大ベストセラー作となる『図書館戦争』にも通じる、”戦闘状況下でのラブロマンス”。もはやこの作者の十八番となったあれです(笑)…心理描写が一を聞いて十を知れっぽくてちょっと分かりづらいきらいはありますが、『図書館戦争』の萌芽を感じる作品だけに、ニヤリとしてしまいました。まあ、『空の中』でもあるにはあったんですけど、本作でより原型が出来ていった感があると言いますか。
ああこれでやっと三部作読了かあと感慨にふけっていたら、各スピンオフエピソード短編集が残ってたりしました。それだけ作者も読者も愛着のある作品だったということですね。馴染みになった登場人物たちの物語にまだ浸れる楽しみが残っているのは嬉しい一方で、まだまだ読了できていないお気に入りシリーズものが他にわんさかあることを思えば、早いところ片付けてしまいたい焦りもあったりで何だか複雑です。

オススメ度:☆☆☆

21

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永遠の0(ゼロ)

司法試験浪人中の佐伯健太郎は、ジャーナリストの姉・慶子から太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べるアルバイトを持ちかけられた。最初は気乗りしないまま引き受けた健太郎だったが、久蔵を知る戦友たちから話を聞いてまわるうち、積極的に知りたいと思うようになっていく。インタビューで語られる久蔵は、抜群の飛行技能を有するゼロ戦パイロットだったものの、命を惜しむ臆病者とそしられることも多い人物。にもかかわらず、その最期は特攻だったと言う。なぜ、彼はそのような行動をとったのか?

この作者のデヴュー作ですが、またもや初めて読む作家さんとなります。しかし、作家名もこの作品名もずいぶん前から知っていたのでようやくといった感じ。とくに本作はあちこちでの高い評価を聞いていたので期待度大でした。ゼロ戦の話とは聞いていましたが、SFかファンタジーっぽい仕立てにした話なのかなと勝手に想像していました。しかしこれが、ど真ん中直球勝負の、戦争を題材にした物語だったのです。決して嫌いではない…いやむしろ好きなほうかもしれず、以前はわりと読んだりしていましたが、考えてみれば久しぶりでした。
さて本作ですが、細かな描写力は弱く感じられたものの、分かりやすく読みやすい文章で物語には入っていきやすかったですし、あらためて戦争の悲劇には心が動かされました。そして今まで読んだ戦争関係の本と少し違った切り口もあり、それも私的には新鮮でした。特に、日本軍上層部が現代の官僚組織と同じ体質であるといった考え方や、戦争を煽ったのは新聞社であるといった捉え方は、正しいかどうかはともかく、妙に目からウロコ状態でしたね。
まだ一作だけではありますし、題材が感動を呼びやすいものでしたので、本当にこの作者の筆力として評価して良いのかどうかまだ分かりませんが、今後、要チェックの作家さんではありますな。

オススメ度:☆☆☆☆

20

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炎の蜃気楼(ミラージュ)

武田信玄の霊を封印した”魔縁塚”が何者かによって破壊された頃、松本に住む高校生・成田譲は自分が火だるまになる夢を見た。彼は学校を無断で休むようになり、無意識のまま町でケンカをするのだった。一方、譲の同級生・仰木高耶はある日、直江信綱と名乗る男に出会った。彼は高耶の本当の名前が戦国時代の武将・上杉景虎であり、上杉兼信の息子であると告げた。彼は、”換生”という方法で他人の体を奪い、悪霊を調伏する為記憶を無くさず生き続けてきた”換生者”なのだと。しかし彼にはその記憶が無かった…そしてこれらは今、戦国武将たちの悪霊が現代に復活しようとしている事件の前触れに過ぎなかったのだ。

けっこう人気シリーズのようですが、全然知りませんでしたし作者も知らない人。コバルト文庫ということはジュニア向け小説ということでしょうか。最近の電撃文庫みたいな?読んでみると異能アクション物だったので、これはアニメにしやすそうな話だと思って調べてみたら案の定テレビアニメにもなっていました。こっちも全然知らなかった(汗)
設定のユニークなところは、いわゆる生まれ変わりとは少し違うようだという点です。ジャンル的には気に入りそうな気がしていたんですけど、第1巻だけ読んでみたところ、イマイチ乗れなかったなあ。なんでだろう。

オススメ度:☆☆

19

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奇面館の殺人

作家仲間の代理で奇妙な集会に出席することになった鹿谷門実。謎の建築家の手で造られた「奇面館」の異名を持つ屋敷を訪れた彼を待っていたのは、豪雪に閉じ込められた館で起こった殺人事件だった。警察が到着できない状況の中、鹿谷の推理が始まった。

長い沈黙を破っての綾辻行人・「館」シリーズ最新作。前作『暗黒館の殺人』はシリーズ最長のボリュームだったわりには大コケした感が無きにしもあらずでしたので、待ちに待った期待と、もうこのシリーズもダメかも知れないという不安が半々といった心境で読み始めました。館の主人と招待客が全員顔をすっぽり覆う仮面を被らされた状態での殺人事件という、非日常的なシチュエーションは、ミステリーとしてもこれまで無かったんじゃないでしょうか。当然読者は”入れ替わり”を念頭に置いて読んでいきます。いわゆる”吹雪の山荘”状況も併せて、まっとうな本格ミステリーとしてストーリーは進んでいくのですが、前作や『Another』のようなホラー色はなく、あくまで直球勝負。しかしあまりにストーリー展開がまっとう過ぎて、頭の隅ではかえって「何かあるんじゃないか」と疑いつつ物語は終盤へ。そして、ああ、なるほど。「大どんでん返し」はありませんでしたし、驚愕するほどの仕掛けもありませんでしたが、それなりのケレン味もあり、全体にうまく作り上げられたミステリーでした。この構成力はさすがと言うしかないでしょう。ベテランの円熟した技量といったところ。もうひとひねりあれば文句なしなんですが…まあ作中人物にも語らせているとおり、これ以上ややこしくすると収拾がつかなかったんでしょうね。『Another』あたりからこの作者もまた持ち直してきている感じ嬉しい限りです。さあ、いよいよこのシリーズもあと一作。楽しみだけど、発表はいつになるんだろうなあ…あ、その前に、『時計館の殺人』読まなくちゃ。どういうわけか、私、この一作だけ未読のままなので。
そうそう、前述の『Another』、今テレビアニメで放送していますね。続けて実写映画化もされるようです。作品が映像化されるのって、この作者初でしたっけ?

オススメ度:☆☆☆

18

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泣き虫しょったんの奇跡

平成17年、将棋界に激震が走った。それまで奨励会という養成機関を経てしかなることが出来なかった将棋のプロ棋士に、アマチュアから編入するという快挙を成し遂げた人物が登場したのだ。彼の名は瀬川昌司。この本は、彼が、一度は諦めたプロへの道をもう一度歩み出し、ついに念願を果たすまでの記録。

私は、自分の趣味は将棋ですと言うことなど、残念ながらとてもできません。なにしろ小学校で流行った頃以外はほとんど打っていないのですから。しかし、ずっと興味はあり、時間があれば(やらない奴の常套句だって?ええそうですとも。ふんっ)やりたいなあとか思っているうちにズルズルと今日まで来ちゃいました(苦笑)。なのでこのブログでも将棋関係の本や話題の記事がいくつかあるのもそういったことが大きく反映しているのです。羽生善治が登場して以来、史上最強の名を欲しいままにする活躍、やがてその評判通り七冠の制覇という偉業を達成、ネット時代ならではの特性を持つ新世代棋士たちの台頭、めざましい進化を続けるコンピュータとプロ棋士との歴史的な勝負など、常に将棋界のビッグニュースには気をつけていたつもりだったのですが、最近将棋そのものの話題性が低くなってきているのか忙しさにかまけた私のチェック力が弱かったのか、この、アマチュアがプロに編入するというニュースも、チラッと聞いてはいた記憶はあったのですが、スルーしておりました。なので、もしこの本の存在を知らなければ、未だにこの将棋史の1ページとして記されるべき一大事件をきちんと認識できないままだったかも知れません。
さて本書の中身ですが、ご本人の人柄が反映しているのか、”照れ”があるからなのか、かなり激動の道だったはずなのに、そのわりには伝わってくる印象は意外と淡白でした。もっと読み手の血をたぎらせる熱いメッセージが行間を埋めているのかと勝手に思っていましたので。もちろん御本人は静かな闘志を秘めた人物なのだという推察は容易にできますけれど、本を売る側からすると物足りないのではなかったかな、とか余計な心配をしてしまいます。あまり売らんかな主義全開のイロモノ的な作り方もどうかと思うものの、一方で、ドラマティックなネタには事欠かなかったでしょうし、実際思わず引きつけられる箇所も散見できたので、なんか惜しいなあ、って感じもあったりで、そのあたり微妙でした。

オススメ度:☆☆☆

17

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鬼物語

阿良々木暦たちを突如襲った謎の現象。かつて最強の吸血鬼だった忍野忍は、400年前にも目にしたことがあったと言う。その現象の正体は何か?そして暦たちに訪れる事態とは?

おなじみ『化物語』シリーズ。『傾物語』の続編っぽい本作ですが、『囮物語』の後を受けてのシリーズ最終巻の方が気になってもいたし、忍は一番興味のないキャラ(失礼!)なので、はじめはスルーしようかとも思っていました。しかし読んでみて正解。いや、物語自体で言うと、もう当初の面白さを完全に失くしてしまっており、スルーしてもよかったようなレベルではありました。だらだらとページを埋めるためだけの昔語りが大半で、もうどうしようもねーな、って感じでした。しかし本書ではこのシリーズのファンなら黙って見過ごすことのできない大事件が起きるのです。わりとパターンかなとも思うものの、ここだけは必読。あともうひとつ、以前から名前の出ていたキャラが初登場したのも、まあ事件ちゃあ事件ですかね。ふうん、こういうキャラなのかという程度ではありますが。
さあシリーズもこの巻のあと、『恋物語』で終了(のはず)。いよいよって感じですが、最後くらい強烈なインパクトを残してほしいですね。
”大事件”がなければ星はふたつにしたいところでしたが、○○○○○に免じて(?)特別大サービスの三つで。

オススメ度:☆☆☆

16

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第四の男

櫻藍女子学院高校の生徒・星山玲奈の拉致未遂事件が発生した。しばらくして今度は玲奈を襲ったという犯人グループから警視総監宛の脅迫状が警察に届く。別の女子高生を誘拐したので取引をしたいと持ちかけてきたのだ。玲奈と同じ高校のミステリィ研究会のメンバー・ミリア、ユリ、仁美の三人と顧問の石崎も巻き込んで事件は意外な方向へと向かい始める…

久しぶりに手に取りました、この作家さんの小説。以前に読んだ『首鳴き鬼の島』がまずまず面白い作品だった記憶があったので期待して読み始めたのですが、本作はそちらとは趣が少し違った”女子高生シリーズ”なるユーモアミステリーものの最新作でした。『日曜日の沈黙』という作品の方のグループですね。『謎解きはディナーのあとで』の大ヒットを受けて人気上昇中の東川篤哉や大御所・赤川次郎以外にもユーモアミステリーを得意とする作家さんの活躍はいいことだと思います。もっとも、私は赤川次郎作品食傷気味になって以来、このジャンルは敬遠がちにしてきたのですが(何だそりゃ)…
で、いいことだと言っておきながら何ですが、本書の中身的には、メインキャラクターたちの掛け合い漫才の方ははっきり言ってあまり面白くなく、一方でミステリー部分はわりときちんと出来ている感じでした。で、結果、この作家は普通のミステリーをもっと書いた方がいいんじゃないかと思ったりもして(あれ?そうなるんだ)。

オススメ度:☆☆☆

15

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ハードラック

ネットカフェ難民となった相沢仁は、闇の掲示板で知り合った男女と、軽井沢にある金持ちの家に強盗に入る。しかしそこで何者かに後頭部を殴られ気絶。気がつけば雪の中に放り出されていて、屋敷は火に包まれていた。わけが分からないままその場を逃げ出した仁だったが、その後のニュースで焼け跡から3名の遺体が発見されたことを知る。殺人と放火の罪を着せられた仁は、逃亡しながら自分を罠にはめた真犯人を捜し出そうとするのだった。

デヴュー作・『天使のナイフ』以来、久しぶりに読んだこの作者の小説ですが、もともと文章力やストーリーテリングには安定したものを感じていたので、今回もある程度読ませてくれるだろうという期待はありました。派遣切りやネットカフェ難民、振り込め詐欺など、最近話題にもよくなっている雇用の問題点や犯罪を題材にしながらスピード感のあるストーリー展開で読者を引き込みます。本格ミステリーのようなアッと驚かせる謎解きこそないものの、面白く読める社会派サスペンスに仕上がっています。社会の歪みに翻弄される人々を描く手腕もちゃんとあって、作品の完成度は高いと感じました。あと、何か独自のアイデアというか、”フィニッシュホールド”さえあれば、文句なしなんですが…しかしこの分だと、いずれものするんじゃないかと思っていますけど。
そうそう、作中、ミステリー映画『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレがあるので、これから観ようと思っている人は御注意を。

オススメ度:☆☆☆

14

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MM9 -invasion-

怪獣が自然災害の一種として認識されている現代。気象庁は怪獣対策チーム・通称「気特対」を擁して日夜対応に当たっていた。7年前に出現した少女の姿をした怪獣6号「ヒメ」。眠りについたままのヒメを移送中のヘリが、突如飛来した青い火球と激突して墜落する事故が発生。その頃、高校生・案野一騎は不思議な声に導かれ、その主を探しに出る。その声は、宇宙からの怪獣襲来を警告するものだった!

怪獣SF小説・『MM9』の続編。前作は短編連作集でしたがちょっとパロディっぽい作風と、それでいて本格SFのテイストをうまく融合させた面白さが気に入り、長編での続編を望んでいたので、まさに待ち望んでいた一作という感じでした。しかし、いざ読んでみると本作は前作と比べ、肝心の「気特対」の活躍があまりなく、純粋な続編ではない印象を受けました。その代わりというか、一騎少年を中心とした怪獣物活劇としての別の面白さがあり、笑える要素に関しては前作以上で、宇宙生命体の”ジェミー”と一騎の漫才的やりとりは、もしかしたら本作で最も良かった箇所かも知れません。ただ、その一方で前作で嬉しくなってしまった世界観の設定での基本ルールみたいなものが、本作ではところどころでほころんでいるような気にもなって、全体では、よくありがちな続編パワーダウン状態のまま終わってしまったのが期待していただけに残念。この後さらに続編『MM9 -destruction-』に続いていくらしいのですが、はたしてどうなるのでしょうか。
ところで、また今回読んだ本も”続編”です。昨年の反省はどこへいったのでしょう(苦笑)…ま、いいか。

オススメ度:☆☆☆

13

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No.6

近未来、人類は世界の六ヶ所を拠点にして生存していた。それらの都市の中でも最も最先端科学の粋を集めたのが”聖都市”と呼ばれる”No.6”である。2013年、エリートとして将来を約束されていた12歳の少年・紫苑は、台風の日に、ネズミという名の個性の強い少年逃亡犯をかくまってしまう。そしてその日から紫苑の運命は急変することになるのだった。

ストーリーテラー、あさのあつこの近未来冒険SF小説です。SF的な道具立てやストーリーはスタンダードなもので、特筆すべきものは何もないのですが、人間というものをしっかり描いているのがこの作家の本領。しかしさすがにジュニア向けなので、深い心理描写も一般成人用の小説では特段珍しくないため普通に読めてしまいましたが、一方でどこか新鮮だったりもして、もっと若い頃に読んでいればインパクトも数倍違っていたように思われます。そういう意味ではせめて高校生くらいまでには読んでおいてほしい一冊。全9巻で完結しました(そうそう、これも昨年から時間を取られた原因のひとつとなった長い物語でした)。テレビアニメにもなりましたが、そちらは時間がなかったのか、いろいろ細かい部分の説明をしないまま終了、という印象でした。

オススメ度:☆☆☆

12

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